四畳半神話体系


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冥土の土産に持っていくとしたらランキング上位。ずっと手元に残しておきたい作品である。

何度も似たような(所々違うらしい)言い回しが出てくるのだが、リズミカルでシニカルで笑みが隠せないから、なかなか外では読めない。

自分からけしかけた喧嘩を戦争と呼び、どうにも収集がつかなくなって、逃げ出すことを戦略的退却という。

物は言いようとはまさにこのことである。

そして物事のすべての起因を小津にしてしまうところも。

ラブドールの香織さんに対して、淡い恋心を抱き、歯科衛生士の羽貫さんの誘惑にも打ち勝ち、最終的に明石さんとの恋を成就させるべく、奮闘する。

常住坐臥つきまとう、

 

私はあなたを全力でだめにします、僕達は運命の黒い糸で結ばれているのですから。

 

 

響いたのは、師匠のお言葉。

何年も留年しているのに、それがもはやかっこいい神がかっているような存在として描かれている。

 

あなたは色んな可能性があったのではないかと夢想しそれがうまく行かなければ小津くんのせいにしている。だがしかし、人生に可能性なぞないのである。

その点、小津くんは自分の運命をどんなものであろうと、どっしりと構えている。

的を得てるねー

 

大学生は誰もが夢見ている。多くの友達と夜明けまでどんちゃん騒ぎをし、勉学にもそこそこ打ち込み、恋愛にももちろん全力で取り組む、

なんてことを。

私もそうであった。

もうちょっとこうすればなんてことを一ミリも思わないわけではないが、実際やりたいことはできたし、わりかし満足している。

だからこそ、この主人公の気持ちはよくわかるし、只者ならぬ妖気を垂れ流ししている占い師がいたら、私とて危うく財布の紐をゆるめたかもしれん。

あの、占い師とのやり取りは何度読んでも最高だ。

論理的に考えた。

能ある鷹が爪を隠しすぎて、出しどころがわからなくなってしまったとか、好機はすぐ目の前です。

あなたはきっと長生きするでしょうから、好機を掴むことができるでしょう、

都合が悪くなれば、好機というものも、刻一刻と変化していくものです。

 

確かに、私は人の話に耳を傾けてこなかった、早くも自分の人生に決定権なぞないのだと判断すべきであった。